私は朝ドラが見れない

だいたい長続きしない。

半身浴

日々、ブログに書けるような奇想天外な事は起きないし、

こういう考えみたいな考えを書いた直後では他の考えは思いつかないし、

ぼんやりと考えていることがまとまらなくてブログに書けない。

 

このままじゃブログを止めてしまう。

ということで、

ぼんやり考えていたor今思いついた空想を書いていこうと思う。

 

 

 

半身浴

 

姉妹の家は決して生活に余裕があるわけではない。

食いっぱぐれることはないが、贅沢と言えば姉妹の誕生日に食べるケーキと寿司、それに正月に食べるおせちに特別感があった。

けれどひもじさを感じたことはない。

ママは料理が上手で、鶏の胸肉としめじを味噌で味付けした炒め物や、冬の寒い朝に食べる温かいにゅうめんに入っている溶き卵を美味しかったし、遠足のお弁当ではさつまいもと出汁で炊いたご飯は芋がごろごろ入っていた。

好きなアニメのキャラクターグッズは誕生日以外では買ってもらえないし、きらきらしたカラーペンだって今使っているペンがなくなるまで買っては貰えない、でもママはお腹いっぱい食べさせてくれた。

しかし、二人は少しだけ退屈だった。

学校にいる時は走ったり、本を読んだり、お喋りをしたり、たくさんのことができた。

家に帰ってきて、宿題をすませて―― 宿題と明日の準備ができていないとママに叱られてしまう!―― ご飯を食べ終わって、テレビを横になって見ていたら「お風呂に入らなくちゃ!」とあやちゃんが言った。

あいちゃんとあやちゃん姉妹は4月生まれと3月生まれ。

同い年だけど一歳ほどの差があってあいちゃんの方が背は高いけど、あやちゃんの方がぽっちゃりしてた。

あやちゃんの方がご飯をたくさんおかわりするからだ。

あいちゃんは運動が得意で勉強だって出来る。

あやちゃんは国語と道徳が好きだけど、算数と体育は苦手で、お家ではあいちゃんが今日の算数をみてあげた。

小学校にあがる前から二人はいっしょにお風呂に入っていた。二人いっしょに入るからお湯は少ない。二人で入ればおのずと溢れてくるからだ。

五年生になったあいちゃんは、最近あやちゃんとお風呂に入るのが少し嫌だ。

あいちゃんはおっぱいが小さい。なかった。だからあやちゃんの張ったおっぱいを見るのが少し嫌だった。

せめておけけくらい早く生えないかなぁって近所の銭湯に行った時、ママに言ったらママはずっと笑ってた。悔しくて、それ以来、誰にも言ってない。

ママは服とぱんつを一緒に洗濯するのが嫌がっているので、まずは服だけを洗濯機の中へ入れる。そして、ぱんつや靴下、使ったハンカチを洗濯籠にぽいぽいっ。

脱衣所は11月頃から寒くなる。寒い、寒いと言い合って、洗い場でシャワーのノズルを回す。

お湯になるまで時間がかかるから、霧雨のようなシャワーが体にかかって、冷たい、冷たいと言い合う。

落ち着いてくるとあいちゃんから先に髪を洗う。

狭い洗い場にプラスティックのピンクと黄色の椅子を横に並べて座る。

洗う時、あいちゃんとあやちゃんの連携は早い。シャンプーの泡で髪の毛が白くなった頃、浴室の鏡は曇って、二人の体もほこほこする。

あいちゃんが先に頭を洗って、あやちゃんが体を洗う用のタオルで体を洗う。それが終わると交代だ。洗い終わるタイミングが同じだからシャワーの取り合いにもなるけれど、結局高いところにシャワーをかけて二人いっしょにかけ流す。

当然だが、一人一人にかかるお湯は限られているので時間がかかる。肌を寄せ合い、温かさで赤くなってきたあやちゃんの腕があいちゃんの日焼けした肌にあたる。

どうでもいいことで笑い合って二人は全部流し終えると浴槽に、ざぶん。

二人で入ればお湯は肩まで浸かる。

あやちゃんが歌をうたう。ママにそっくりの歌声で。

紐をひくと泳ぐカエルのオモチャをあやちゃんの腕にめがけて発射して、浴槽のへりに乗せていたアヒルを湯にくぐらせる。ざぱん、じゃぷん。笑い

合っていると「ただいまー」とママの声。二人は十分に暖まっていなかったけど、お風呂をあがろうとしたけれど、ママが「ちゃんと数をかぞえた?」と聞いてくる。

ちゃんと暖まるようにいっしょに数をかぞえる。もう五年生なのにそんなのいいじゃんって思ったけど、あやちゃんが数を歌い始めたからあいちゃんもそれにつられて声をあげる。

 

 

綾が家を出て三か月。

新幹線で一時間の街で綾は高校の時から付き合っている彼氏と同棲している。遅かれ早かれ、いずれは結婚をするのかもしれないし、この同棲で破局するかもしれない。

家を出て行く前日はあんなに心配をしていたのに、当日はどこか希望に満ちた顔をしていたのを私は忘れない。

「いーち、にー、さーん、しー」

古い団地のこれまた古い浴室で私は小さい頃のことを思い出しながら数を歌う。

一緒に歌う妹はもういない。

ママや私と縁を切った……とまではいかないけれど、彼女はもうこの古い家に戻っては来ない気がした。築三十年は経ってもリフォームとは無縁の住宅だから当然なのだ。

近くの銭湯も五年前に廃業して今では駐車場になっている。八百屋のおじさんは体調を悪くして店を畳み、その後にお洒落なパン屋さんになっていたがあまり美味しくない。団地に併設された小さな公園と坂の上の神社が変わっていない。

変わるもの、変わらないもの。

綾と私。

どちらがいいのか、どちらが正しかったのかもわからない。

不意に思う。小さい頃、綾の胸が大きいと思っていたけれど、あれは脂肪だ。ぽっちゃりしていただけだ。

そこから記憶は数珠のように連なり、高校にあがって互いに貧相な胸元であることが姉妹の証であると気付くと同時に、アンチ巨乳同盟を結成した。

いっぱい馬鹿なことをして、つまらないことで悩んで、足りない頭なりに考えて、綾は出て行った。

私やママよりも彼氏を選んだ。

そうやって綾を悪者にすることで、外へ出なかった自分を正当化したいのだ。

あの頃よりもずっと体は大きくなった筈なのに、ぽかりと空間があるように思える浴槽で私は身を縮ませて悶々としている。

 

「逢、焼き芋食べるー?」

ふと、ママの声。

風呂上りに焼き芋かよ、なんて思いもしたが半年前に買った水蒸気機能がついた電子レンジをフルに使い、料理のレパートリーを更に増やしたママが呼んでいる。

「……食べるー!」

それが美味しいと知っているから、私は大きな声で返事をした。ばしゃん、と湯が跳ねる。

食物繊維は体にいい、まだ7時だからセーフだと運動不足気味の自分に言い訳をして。