私だけのパンプス
パンプスが壊れた。
べりっと剥がれた靴底の爪先や踵が山の斜面のようにすり減っていた。
四年半使っていたパンプスは仕事、プライベートを問わずに履き続けていた。
面倒臭がりな私は手入れはお試しの気持ちで靴専用のクリーニングに1度出しただけだった。
パンプス自体は有名ブランドものでもないが、専門店でしか買えないという意味では何処でも買えるわけではない、しかし買った時に1万円ほどだったので特別高価なわけでもない。
買った当初は鮮やかだった生成色の側面が使い古したベージュになっていた。
この薄汚れた壊れたパンプスが、私が今まで色々な場所に行って、喜んだり、怒ったり、悲しんだりした時に掃いていたものなんだなぁと思うと少しだけ感慨深くなる。
捨てるし、捨てるんだけど、この市販品のパンプスを四年半履き続け、ぼろっちくはなってしまったが私だけのパンプスなのだと思うとやっぱりこう、少しだけ思うところがある。
相変わらず玄関に転がっているパンプスが、この玄関からいなくなると思うとやっぱり寂しい。
でも修理をするほどかと言われると微妙だし、修理している間に履く靴を履いている間にそっちの靴にきっと愛着をもつに違いない。
うーん。
この間、一番疲れた日に履いていたパンプスがその夜についに悲鳴をあげたので、
私の心身と連動していたのかもしれない。そうだったらやっぱり捨てるのが惜しくなる。
ただ四年半使っていたから寿命がきただけと言われたらその通りなんだ、でも、こうロマンを求めてしまう。
とりあえず、まだ玄関に転がっている。
早すぎるが冬靴を履いて、冬の間に修理の店を探してみようかなぁ。